リーダーシップとコーチングのフレームワーク(DDI)を学びました
こんにちは。
普段は、プログラミングやWeb開発の話題の多いしずかなかずしブログですが、本日は、リーダーシップとコーチングの話題を取り上げてみます。
というのも、先日、本業の会社の方でDDIという会社のフレームワークを使ったコーチングの社内研修を受けました。研修では、フレームワークを学ぶと同時に、4,5人一組のグループに分かれ、実務で起こりそうないくつかのケースを題材に、ディスカッションなども行いました。
そこで、この記事では自身の備忘録も兼ねて、DDIのフレームワークの私なりの理解で整理します。ネットで調べてみたところ、本家のサイトに「All leaders need to be effective at interacting with others—and they must develop the basic skills to do so.」という短い記事がありましたので、ここも参考にしてみました。
リーダシップと対話
「リーダシップ」というと何を想像するでしょうか?
私のような昭和世代なら、なにか1つの目標に向けてぐいぐい人々を引っ張って、人々を強制してでも目標をやり抜くようなカリスマ的なリーダー像を思い浮かべる方も多いかも知れません。
高度経済成長時代のように、世の中の流れが明らかな一方方向。誰もが同じ方向を向いて同じような目標を達成しようとしている。そんな時代のリーダーは上のようなイメージかも知れません。リーダーとなる人は、以前から培ってきた知識や経験を最大限に生かして部下となるフォロワーを指導したり、場合によっては真似させることで、成果を達成することができました。
しかし、2021年現在は状況が異なります。変化は至るところにあり、仕組みや価値観は急激に変わります。あまりにも変化が大きいため、親世代が子供の頃にやっていたことを子供世代にそのまま教えることは意味がありません。私が子どものころは、会社に所属すること無く一人で動画を撮って食べていけるなんてことは考えられませんでした。過去の知識は文字通り過去のモノになり現在には通用しないケースがとても多いのです。
もはや、自分の知識を元に部下を指導する、というスタイルは成り立たなくなっているのです。リーダー自身も経験したことのない全く新しい状況に対処する必要があります。フォロワーの方が、実は最新の知識や経験に長けている可能性が高いです。
したがって変化の激しい時代のリーダーは、単に自分の知識や経験を教えるのではなく、フォロワーの能力を引き出すようなコミュニケーションを学ぶ必要があるわけです。
対話におけるニーズとは?
DDIでは、リーダーとフォロワーの対話(interaction)におけるニーズを2つに分類しています。
実務的なニーズ(practical needs)と人的なニーズ(personal needs)です。
社内の研修では、タスクニーズとヒューマンニーズという言い方で教わりましたが、日本人向けのカスタマイズでしょう。
実務的なニーズとは、仕事を進める上で直接的に必要になってくる対話に関するニーズです。
- 意思決定する
- コンフリクトを解消する
- 課題解決する
- 仕事を遂行する計画をつくる
- 変革をみちびく計画をつくる
などです。
一方、人的なニーズは人を動かすための対話に関するニーズです。
- 聞いて欲しい、理解して欲しい
- 尊敬されたい、尊重されたい
- 信頼されたい
- 意義をわかった上で関わりたい
- サポートして欲しい
リーダーはこの二つのニーズを満たせるように、コミュニケーションのスキルを向上させる必要があるのです。
対話のガイドライン(Interaction Guideline)
先述のように、変化の激しい時代のリーダーシップとしては、自分の知識や経験を元に指示するようなやり取りではなく、フォロワーの行動を引き出すような対話が必要になります。そのような対話を達成するために、DDIでは「型」を定義しています。それが「Interaction Guideline」です。主に、実務的なニーズを満たすものになるでしょう。
例えば、フォロワー自身が持っている実務上の課題を引き出し、一緒に解決をするようなケースがあったとします。リーダーはフォロワーとの対話を通して解決に向けたアクションを引き出す必要があるでしょう。そのような場合に対話がうまくいくようにする「話の流れ」の定型フォーマットようなのもです。
オープニング(OPEN with what and why)
最初に、フォロワーに、これから何の目的で、何の話をしようとしているのか。そして、それがなぜ重要なのかを伝えます。
状況把握(CLARIFY details)
よくやりがちなのは、いきなりリーダー自身の知識や思い込みなどをベースに、指示をしてしまうというパターンです。Interaction Guidelineでは、そうではなくて、まずは状況の把握をきちんとしましょう、ということです。何しろ世の中変化が激しい。先週と今週では(もっというと、昨日と今日では)がらっと状況が変わっている場合もあります。リーダーが知らない内に、なにかとんでもないことが起こっている可能性があるわけです。
選択案づくり(DEVELP ideas)
つぎのステップは、フォロワーからアクションに向けたアイデアを引き出すための「選択案づくり」です。
ここでもよくやりがちなのは、リーダー自身の経験を元にした、アイディアを出してしまうことです。それだと、何か「やらされ感」が出てきてフォロワー自身が納得して仕事を進めることができなくなるかも知れません。したがって、このステップではリーダー自身のアイディアや意見は最後に述べることが重要です。まずは、フォロワー自身が考えられるような質問の投げかけにより、フォロワーから考えやアイディアを引き出すイメージで進めます。
合意決定(AGREE on actions)
アイディアが出てきたら、実際に行動に移します。実際に誰が何をいつまでに行うかを明確にします。
クロージング(CLOSE with review and set follow-up)
最後に、何に関して話をしてどういうアクションを取ることにしたのかを総括します。謝辞を述べて、後述するような自尊心を高めるような言葉をかけてモチベーションを上げるのも良いかも知れません。
5つの基本原則(Key Principles)
リーダーがフォロワーと効果的にコミュニケーションするために注意すべきポイントが、5つの基本原則としてまとめられています。こちらは特に、人的ニーズを満たすために重要になってきます。
- Maintain or enhance self-esteem.(自尊心)
- Listen and respond with empathy.(共感)
- Ask for help and encourage involvement.(参画)
- Share thoughts, feelings, and rationale. (to build trust)(共有)
- Provide support without removing responsibility. (to build ownership)(支援)
英語は本家のサイトより持ってきましたが、私が研修で教わったのは、カッコ内の日本語の方。たとえば、上で述べたInteraction Guidelineに沿ってフォロワーと対話を行う場合に、この5つの要素を意識すると効果的です。
Maintain or enhance self-esteem.(自尊心)
フォロワーの自尊心を大切にするような言葉をかけます。例えば、これから新しいことにチャレンジするような機会があれば重要視されている、ということを伝えることが本人のやる気につながるでしょう。また、フォロワーが何か失敗をしてキャッチアップが必要な場合。自尊心を「まもる」投げかけも必要になります。失敗を感情に的に責め立ててしまう人もいるかも知れませんが、そうではなくて、事実に焦点を当てて本人が次に向けて前向きに取り組むためには、まずは自尊心をまもる会話が必要になります。
Listen and respond with empathy.(共感)
フォロワーの気持ちを理解しているということを、言葉、あるいは非言語(表情とか行動とか)で伝える、ということです。特に、ネガティブな状況で効果的です。「どうも共感できないなー」と思うこともあるかも知れませんが「同意」するということではありません。相手の感情を「理解していること」を伝えることに意味があります。共感は否定的な感情を和らげる効果があります。
Ask for help and encourage involvement.(参画)
意欲とか責任感をもってもらうことです。リーダーから何かをお願いする場合にも、一方的に指示を出すよりは、アイディアを引き出すような質問の投げかけをして、それによって自律的な行動をみちびくことができます。たとえば、「〇〇をするにはどうすればいいだろう?」という投げかけです。フォロワーが自分自身で考えることで意欲や積極性をあげてもらおうということです。
Share thoughts, feelings, and rationale. (to build trust)(共有)
信頼関係を築くうえで、リーダーが自分自身の考えを示すことが重要です。リーダーがその立場だから持っている情報やその情報に対する自分の考えをフォロワーに示せば、より信頼につながるでしょう。ただし、リーダーの意見で置き換えてしまうような共有は、フォロワーの意見を否定する結果につながるので注意したいところです。
Provide support without removing responsibility. (to build ownership)(支援)
よくありがちなのは、フォロワーが仕事をうまく進められず、リーダーが引き取って実行してしまうパターンです。変化が激しく不確定な時代に求められているは、参加者一人ひとりが自律的に動くことで物事をうまく運べるようにするよう、各個人を側面から支援するリーダーシップです。リーダーが仕事を引き取ってしまっては、リーダー自身がその仕事に忙殺されるだけでなく、組織が自律的に機能しなくなるという意味で問題があります。フォロワーが自律的に動くために支援を得られるような会話が必要です。「何かサポートできることがあるか?」といった具体的な問いかけにより、フォロワーの自律や積極的な関与を引き出せるでしょう。
まとめ
DDIのリーダー・フォロワーの対話(Interaction)におけるフレームワークについて備忘録的に整理しました。
自分自身の日々のコミュニケーションスタイルを振り返ってみると、5つの基本原則の中でも、いくつかの偏った観点だけを意識していると感じます。対話における人的ニーズを満たし、よりよい状況を作り出すために、このフレームワークを効果的に使っていこうと思います。
以下の書籍は、研修の中で参考として取り上げられたものです。上記の話とは直接関係ないのですが、近年のリーダーシップ像を理解する上でよさそうです。